かづきれいこ「一度はやってみたい美容外科」

第6回「顔と心と体セミナー」講演録

2021年12月4日(土)13:00~15:00

参加者:32名(1級資格者4名、3級資格者10名、4級資格者2名、当会正会員12名、一般1名、学生2名、招待1名)(会場3名、オンライン25名、DVD 4名(※後日視聴))

【経歴】

(公社)顔と心と体研究会 理事長、フェイシャルセラピスト、歯学博士、REIKO KAZKI主宰   

2005年新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻修了後、日本医科大学大学院医学研究科入学。メイクを通じて多くの人が抱える「顔」の問題にメンタルな面からも取り組むフェイシャルセラピスト。医療機関と連携し、傷跡ややけど痕などのカバーや、それにともなう精神面のケアをおこなう“リハビリメイク”の第一人者。

広い世代を対象に、雑誌やTVなどで活躍する一方、学術論文を発表しメイクの価値を高めるために、幅広い活動に取り組んでいる。日本医科大学社会連携講座「顔と心と体の美容医学講座」開設。

【講演録】

ーはじめにー

 おとといの日本医科大学でのリハビリメイクは、肩にイチゴ状血管腫の瘢痕がある患者さんでした。イチゴ状血管腫は、乳児期に発症する赤あざで、成長とともに赤味が薄れていくことが多いのですが、色が消えた場合でも、皮膚に跡が残ることがあります。この患者さんも、色は消えているのですが、皮膚にやや凹凸が残っていました。私のリハビリメイクを受けるのは2度目と言われて、大変驚いたのですが、1回目はなんと20年前。私が東大病院形成外科の波利井清紀教授のところでリハビリメイクを行っていた時で、この患者さんは当時4歳ですから、今24歳です。もう一度リハビリメイクを受けたいというので、いらっしゃいました。

 肩の血管腫の痕はきれいになっていましたが、リハビリメイクでさらに目立たないようにしました。実はこのとき、彼女の眉が気になったので、血管腫の痕とは全く関係ないのですが、眉も整え描くと、彼女はその眉が気に入り、自分でも描けるようになるために是非習いたいと、レッスンを受けられることになりました。そうなると、もう肩の傷痕は関係ないんですね。彼女が気に入った眉を自分で描けるようになれば、すごく自信ができて、肩の傷痕は全然気にならなくなると思います。

 リハビリメイクの目的は、隠すことではありません。自分に自信がもてるようになって、ありのままの外観を受け入れられるようになることです。リハビリメイクは、そのための手段に過ぎないのです。自分の外観を受容できるようになって、必要なときに、満足できるメイクができれば、それが一番いいのです。

 彼女は現在、日医大の形成外科の小川教授のところに通院され、肩の血管腫の痕をティッシュ・エキスパンダー法で手術するかどうか相談しておられました。この方法は、血管腫の痕のある皮膚を切り取って、隣接する箇所にバルーンを入れて皮膚を伸ばし、その皮弁で傷痕を覆うというもので、半年くらいの加療が必要です。血管腫痕はきれいになりますが、傷痕が1本の線で残ります。20年間で随分きれいになってきたのに、また傷つけるわけです。彼女に寄り添って下さる小川教授も私と同じ想いで、「僕の家族ならやりません」、「気にならなくなればいいのですよ」とおっしゃって、メイクを紹介してくださいました。彼女がメイクで納得されて喜んでいただいて、私も本当にうれしかったです。

【2.最近の美容外科】

 今日は原岡先生と美容外科をテーマに対談させていただきますが、いま美容外科をやりたい人はたくさんいると思います。美容外科の広告は、テレビだけでなく、電車、バス、タクシーの中など、どこでも目にするようになっています。「あなた、まだやっていないの?」「是非やりましょうよ」というようなメッセージですね。私は美容外科を全く否定するわけではないのですが、少し安易すぎないかという気がします。自分の顔は、一生でたったひとつのかけがえのないものです。そして老化は必ず訪れます。いまの自分の顔の悩みを美容外科で解決することは、外観の悩みから永久に解放されることではありません。5年経って老けたら、外科手術したところが沈んだりきしんだりすることがあるかもしれません。そうなったらどうするのかなと、いつも考えています。

 皆さんも経験があると思いますが、今日は絶対髪を切りたいと思う日があります。今日切りたい、今日切らなければいけないんだと思ったのに、他に仕事や用事があって美容院に行けなかったこともありますよね。けれども、2,3日経ったら、まあこの髪型でもいいか、と思えたりするのです。諦めではないけれど、なんとなく「まあ、いいか」と思えるようになることがあるんです。だから、何か思い立ったときに、あまり執着しない方がいいのではないでしょうか。何日か経ったら気が変わりますから。

 でも、確実なことは、老化するということなんです。私も年を重ねて、朝起きた時、「もう今日は『かづきれいこ』はやれないわ」と思うこともあります。かづきれいこももう来年70ですから、疲れてしんどい日もあります。老化は誰にでも来ます。早く亡くなった方はきれいなお顔のままで覚えられているかもしれませんが、命を与えられて生きて年をとっていったときに、老けるということを嫌いにならないでください。

【3.機能と美とは?】

 私ぐらいの年齢になると、目が開かなくて、テープを貼る日もあります。せっかくの機会ですから、かづき・デザインテープではなくて、他社のいろいろなテープを試しに貼ってみたりします。でも、大き過ぎたり、強過ぎて、例えば、目が開き過ぎると、ドライアイになり、涙がポロポロ出てきたりします。細い目が嫌だとか、大きい目がいいとか言いますが、やはり人間の機能というのは、自然なままの方がいいのかなと思います。

 目と言えば、眼科でのリハビリメイクも、もう8年くらい続けています。患者さんは、目が開かない、まぶしい、頭痛がするといった症状で、日常生活が困難になるような方々です。施術法は主にテープです。始めにマッサージをすることで顔が動かしやすくなり、さらにテープで目を開けやすくなると、大変喜ばれます。目は見えるということが本当に大切。若い頃、二重瞼のきれいな大きい目をしていても、50代60代になると目が開きづらくなることもあります。年をとると、目の大きい小さい、瞼の一重二重はあまり重要ではありません。目は見えること、まぶしかったり、しょぼしょぼしたりしないこと。そういうことの方が重要です。美に対する感性は、若い頃には若い頃の感覚があるにしても、年をとると大きく変化していきます。機能と美とは何だろうと改めて考えたりします。

 先日も、鼻の手術をした女の子が来ました。隆鼻術で鼻を高くしたので、本人はその見た目にはとても満足しているのですが、鼻で息がしづらくなっています。彼女にとっては、鼻で息をすることよりも、鼻が高いことの方がうれしいし、満足できるということなのです。ただ、若い時の整形は、50年経ったときにその人がやってよかったと思うのか、それとも後悔するかは、本人にしかわかりません。だから、私としては、美容整形に関して、アドバイスはできないのです。

 私のところにも、お母さんが高校生の娘さんを連れてくることがあります。例えば、一重瞼を二重にしたいという例。きれいな目なのに、本人は、嫌いと思い込んでしまっています。お母さんとしては整形を止めたいのですが、本人は二重にならなければ生きていられないと言ったり、全く外に出なくなったりして、お母さんはおろおろしています。本人のそういう気持ちはどこから来るんだろうと思ってしまいます。

 92歳のおばあさんを介護している人から聞いた話です。おばあさんはご自分で歩け、ご飯も食べられますが、主に部屋のお掃除などの介護を受けています。その92歳のおばあさんが介助者に「私、整形したいんだけど」と言ったんだそうです。私は70歳を超えたら整形してもいいと思います。子供も育って、別に誰にも迷惑をかけるわけじゃないし、整形で彼女が満足して元気になり、人からの世話が必要なくなれば、それは素敵だと思います。

 アンチエイジングの整形について、まだ私は答えを持っているわけではありません。美容外科の先生から「かづきさん、鼻が低いから治してあげようか」と声をかけていただいたときは、必ず「でも十分息ができます」と返事をします(笑)。

【4.メンタル面のケアの必要性】

 機能と見た目は違うのですが、「顔が入口」ということはあります。視覚から入った見た目の情報には、脳が反応しやすいという気がします。だから、自分の顔を見たとき、エネルギーがなくなるということもあるんです。今日は見た目が変だと思ったら、行動も変わるし、気力も変わるし、話す内容も違ってきたりします。

 化粧のいいところは、見た目を変えられるということです。それも自分で能動的にできること。しかも、納得できなければやり直せる。こういう点が、化粧のメリットだと思います。

 他方、整形は一度メスを入れると戻せません。そういうリスクがあるので、気になる所にばかり集中しすぎる人には勧められません。「鼻がおかしいでしょ」とか「この前、目の整形したけどまだおかしいでしょ」というような人。四六時中、顔のことばかり気にしている人には、他のことを考えることができない人もいるようです。

 見た目の問題は、精神的なものと強く関わっていると思います。25年位前にペンシルベニア大学で研修させていただいたことがありますが、美容外科の先生の横に必ず精神科の先生がいました。まずカウンセリングから入るのです。カウンセリング後でなければ、メスは入れません。

 今後は、美容外科と精神科の連携が、ますます必要となってくるのではないでしょうか。整形しようとする人で、「どこが変なの?」っていう人がたくさんいます。すごく目立つ傷があるとか、ひどく顔がゆがんでいるというようなことがあれば、「整形したい」という気持ちもわかります。そうではなく、十分きれいで素敵な人が「どこを整形したいの?」という場合に、精神的なケアをしないでメスを入れても、その人の問題はちっとも解決しないと思うんです。

 精神科との連携と同時に、原岡先生に提案したいのは、メイクとの連携です。本人が嫌だ、嫌いだという部分を含めて、まずメイクで試してみる。メイクであれば、嫌なら取ればいいですし副作用もありません。それだけリスクも減り、メイクで満足できれば、目的を達することができます。

【5.むすび】

 今日ご講演をお願いし、後で対談させていただく原岡先生をご紹介します。原岡先生は、神戸大学という国立大学で美容外科をやっていらっしゃって、独自のお考えをお持ちです。ご自身は美容外科を開業したら流行らないだろうとおっしゃっています。なぜなら、受診された患者さんをそのまま帰してしまうこともよくあると言うんです。患者さんの人生を考えて下さる先生です。美容外科でも心ある先生はたくさんいらっしゃいますが、原岡先生は特に信念をお持ちの方なので、是非お話を聞いてみたいと思っていました。皆さんもいろいろとご質問していただければと思います。

 皆さんも一度は美容整形をやってみたいと思ったことがありませんか。メスを一度入れると、繰り返す人が多くいます。なぜ、やめられなくなるのでしょうか。

 私は、みんながみんな同じ手術をしたら、全員が同じ顔になってしまうのではないかと思います。そのとき、その人の個性はどこにあるのでしょうか?私は、あざも個性、口唇裂も個性だと思っています。だから、個性を大事にしましょうと言っています。原岡先生はどのようなお考えなのでしょうか?是非皆さんと一緒に聞いてみたいと思います。

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